THE ORGANIZATION OF ADVERTISING CREATION
OAC 社団法人 日本広告制作協会
NEWS! イベント&セミナー情報
■「OACクリボラ展2006」トークセッション

第1部は各賞を受賞した会員社の内から、若手クリエイターが参加して、企画から制作までのプロセスを中心としたトークセッション。
第2部はポスター出力に尽力されたエプソン販(株)、用紙選択と紙質に協力いただいた(株)PCM竹尾、お二人様による技術レクチャーがなされました。ナビゲーターは、村上氏((株)草思社プランニング)が担当しました。

日時 2006年3月23日(木)午後2時〜午後3時30分
会場 国連大学本部ビル1・2F UNギャラリー
インタラクティブコーナー
主催 社団法人 日本広告制作協会(OAC)
共催 エプソン販売・株式会社
株式会社PCM竹尾
スピーカー OAC正会員社
(株)クリエイティブオフィス・タブコ/川筋直樹氏(外務大臣賞)、
(株)アクロバット/江本祐介氏(ユニセフ東京事務所賞)、
(株)マック/北茂氏(国連広報センター賞)、
(株)ティ・エー・シー企画/山田晃輔氏、金澤成亮氏(日本広告主協会(JAA)賞)
OAC賛助会員社
エプソン販売(株)/寺沢祐則氏(出力関連)
(株)PCM竹尾/大嶋博氏(用紙関連)
司会進行 (株)草思社プランニング/村上健氏

「OACクリボラ展2006」トークセッション I

会場は、2階左手、クローク近辺のインタラクションコナーの前で開催。
前半は、受賞した中から会員会社のクリエイターが参加してのセッション。
後半は、出力に尽力されたエプソン販売(株)、(株)PCM竹尾のご担当様からのレクチャーがあった。司会は、(株)草思社プランニングの村上健氏が担当。
  司会)  まず、クリボラの経緯ですが、OAC設立が1974年です。30数年の中での主な活動は業界内での加盟広告制作会社のプレゼンスを高めるということでした。今回は、ユニセフさんとの協力で社会貢献とクリエイター自身が社会に目を向けて発信していくべきではないかという大きな課題に取り組みました。
また、社会的反応ですがNHK首都圏ニュースを始め、多くののマスコミに取り上げられました。ネット上でもかなりでています。また、この会場が国連施設ですので、会議に出席した方達が見に来てくれます。中には、東南アジアの文化副大臣がうちの国でやる日本のイベントに絡めて出してくれないかというようなオファーがあったりで大きな反響を呼んでます。
それでは、受賞したクリエイターの皆様をご紹介します。皆様から見て左から外務大臣賞を受賞されました。(株)クリエイティブオフィス・タブコの川筋直樹様です。次がユニセフ東京事務所賞を受賞されました(株)アクロバットの江本祐介様です。隣が国連広報センター賞を受賞されました(株)マックの北茂様です。最後にJAA賞を受賞されました(株)ティ・エー・シー企画の山田晃輔様と金澤成亮様です。
それでは、どうやって作ってこられたかを皆さんにお聞きします。おそらく皆さん、通常の忙しい仕事の中で突然社長からがいつまでやれと云われ、この忙しいのになんだと少なからず思われた方もいらっしゃると思うのですが(笑)川筋さんは、コピーライターですね。いかがですか?
  川筋) OACでボランティアというのは、意義あるし楽しそうだと思いましたよ。
  司会) 手を上げてやったのですか?実際にやってみてどんな感じでした、通常の仕事もありたいへんでしたでしょう。
  川筋) そうですね(笑)
  司会) 江本さんはどうでした?
  江本) 経緯は、社長からほぼ強制的にお前がやれと名指しで云われました(笑)
その時は、ボランティアが入り口だったわけではありません。ボランティアを特に意識しませんでした。
  司会) 名指しされてどうやってこられましたか?
  江本) 実際には、ほとんど自分でやりました。
  司会) 北さんはいかがでしたか?
  北) 社長から話があり、社内で声をかけたところ、数人の手が上がりましたので、 手をあげた全員でやってみようと云うことになりました。当初、ボランティアの意識はありませんでした。
  司会) 金澤さんはいかがですか?
  金澤) 社長の方から話があり、入社1〜2年、3年くらいでチームを組み、週1回か週2回アイデアを出し合い社長とCDとの打合せを行い、序々にステップアップしていきましたが中々アイディアをだすことができずギリギリまで苦労しました。最後にこれで行こうと決まったチームが作り上げたものです。Webも同じチームでやりました。
  山田) 僕も金澤も入社1年目ですので焦りました(笑)。しかしながら公共広告は、何回か街で見てますがありふれていますので、違った切り口で壊してみたいなという気持ちがありました。
  司会) 公共広告的ですが、いままでと違った流れがクリエイティブ上でありましたか?
  川筋) 日常では、クライアントのしがらみがありますが今回は、自由度があり、つくり易かった反面、クライアントのせいにできないやりにくさもありました。(笑)
  司会) 学生の頃、ボランティアをやったことがありますか?
  江本) 町内会でゴミ掃除をやりました(笑)。
  北) 今までボランティアの経験はなく今回、ボランティアというものを体験しました。自分たちのつくったものは、この展示会であらゆる人に見てもらうものです。それだけに、表現する行為自体に責任を感じました。ボランティアというスタンス上、エイズと子供たちについて、間違ったことを伝えないよう、表現する内容について自問自答を繰り返しました。今回そのように考え抜いて作品が出来上がった時、私自身もやっとボランティアの入口に立てたような思いがしました。
  川筋) 問題が大きいので、できるだけシンボリックな絞り込み、エイズと子供というキーワードを全面にガッと出しました。それが怪獣です。コピーは、大人でも子供でも分かるように、ひらがなで簡単な言葉にしました。
ビジュアルは、暗くならずにポジティブにいきたかったので、明るいロゴのみで表現しました。
  江本) エイズという大きな問題で、「世界ではこういう事が起きているのだ、日本では、なかなか知られてない」と私がユニセフのホームページを見た驚きをそのまま出せればいいなと考えました。
兎に角、シンプルに英字新聞をモチーフに普通の子供が悲しそうな顔をしている。最初からこれで行こうと思いました。
  北) テーマが深いので、表現を考える上でたいへん悩みました。子供とエイズの関わりを考えると、いろんなケースが存在するからです。だから、母子感染など、ひとつの問題を取り上げるのではなく、見た人が大きくエイズと子供の関わりについて考えられるシンボルを作れたらと思いました。それが、血の色に染まったLEGOでできた十字架の列です。エイズとの関わりのため子供らしく遊べない、そんな子供たちが世界にたくさんいる。
シンプルにそのことを伝えたかったのです。ポスターを見た人がそこから、エイズと子供たちの関わりについて、自分なりに考えてくれたら。そのための入口になればいいなと、そう思っています。
  金澤) エイズより子供の問題にエイズが隠されていると云うイメージで影を創り、Iを子供にして影にパースをつけることでインパクトを与えました。
苦しんでいるのは子供だと着眼しました。KIDSのKが違うだけでAIDSになってしまいます。AとKが違うだけで子供とエイズが密接な関係にあると云うことです。
  司会) 今後のクリボラをどう考えますか?
  川筋) ボランティアの場を作って頂いてありがたいと思ってます。これからも参加していきたいと思っています。
  江本) 自分が得意な仕事でボランティアができ、しかも自分ひとりの力でなく、それぞれが集まってひとつになって世に出て行くことが良いと思います。
  北) クリボラに参加させてもらい、自分のデザイン力でやれたのがおもしろかった。皆さんが考える入り口になってくれればと思います。
  金澤) 以前から世の中の公共広告のデザインの力がどこまで通用するのかしないのか自分の中にずっと疑問がありました。
その葛藤の中で出来上がったものは、効果があるのかどうかも分かりません。例えばポスターを見て家に帰ってインターネットで子供とエイズの問題を調べる人がはたして何人いたのでしょうか・・・
けれども、これからもデザインの力を信じてやっていきたいと思います。
  山田) ボランティアと云うと毛布を集めたりとか衣類を集めたりとか直接現地へいってやるというようなことを考えてましたが職業でボランティアができることは素晴らしいことです。是非、街中に出して頂きたい。
  司会) 皆様、本日はありがとうございました。ボランティアの語源は、喜びだそうです。それでは、前半のセッションを終了します。

「OACクリボラ展2006」トークセッション II

司会)  それでは、後半のセッションに入ります。会場に展示しました73点の ポスターの出力にご尽力頂きました、エプソン販売(株)Pソリーション営業推進部部長寺沢祐則様と紙をご提供くださいました(株)PCM竹尾 デジタルメディアグループマネジャー開発担当の大嶋博様です。
まず、寺沢さん出力にご苦労があったと思います。また、今後クリエイターにとって役立つことがありましたらお願いします。
  寺沢) OACさんから今回クリボラ展で、出力のところを担当してもらえないかとお話を頂きまして、当社の大判プリンタで出力することがまさに最適であると思いました。しかし、いろいろなデータをいただいてやってみますと中々一筋縄では行かない部分がございました。まず、短期間である事そして、クリエイターさんとコミュニケーションがとれない一方通行で始めました事です。
今回は、色見本がございませんので、クリエイターさんが狙ったものになっているかどうか、後で本日参加されましたクリエイターさんに色の再現性についてご感想を聞いてみたいです。 インクジェットプリンタは、インクを落とす紙との相性があります。
今回は、竹尾さんからご提供いただいた用紙を使用しました。本来時間があれば紙に最適な発色の微調整をやるのですが今回は、その時間がありませんでした。
もうひとつは、73点のデータがイラストレータの古いバージョンから最新のバージョンまであり千差万別でした。デザイン事務所さんのシステム環境も千差万別なのだなと改めて実感させられました。
  司会) 紙のご提供を頂いた大嶋さんお願いします。
  大嶋) 今回ご提供した紙は、i-ファトSかきた300gです。インクジェットは、通常のオフセット印刷のように紙に圧力をかけるのと違い、紙の中にインクを浸透させていくという形をとります。紙の表面にクリアさと深さの方向に曖昧さを感じさせたい。紙は、クリエイターの鏡であり、繊維に絡まったインクの雰囲気を伝えたい、見るひとに空気感を伝えたいと思っています。
そして、紙の持っている表情を大事にしていきたい。
  寺沢) インクは、全て顔料インクを使ってます。お店で売っている個人が使うインクジェットプリンタは大部分が染料インクです。
染料インクは、一般的には、発色が良いと云われますが展示しておきますと色が褪せてきます。長い時間展示しておくには顔料インクが適してます。 エプソンの大判プリンタには2種類の黒インクが搭載されています。光沢系のフォトブラックとマット系のマットブラックです。
今回竹尾さんご提供の紙にはマットブラックインクを使用しました。 今回は、同一品種の紙にどのデザインも同じ環境でプリントしてますが各々クリエイターさんの狙いは違うのではないかと思います。 マット調で作品として落ち着いたイメージにしたい、あるいは、自分はもっとメリハリのある刺激的な表現をしたいとかデザインの仕方によって本来でしたら仕上げにおいても表現方法が違ってくると思います。
プリント側とクリエイターがコミュニケーションをとらせて頂ければもっと違った結果になっていたと思います。
  大嶋) これだけの数になりますと物理的に出たとこ勝負になります。
インクジェットの紙は、たくさんありますが紙の効果的な使い方はクリエイターとの会話からでてくるものです。そこが今回は難しかったのかなと思います。しかし、作品によって足を止めてしまう作品があります。作品とマッチした紙は、明らかに触れられた形跡こそ紙と作品の関係であります。触ったということは、作家のメッセージを感じているのです。
作品が紙によって生かされる、作品にさわるほどメッセージを感じているのです。作家が満足されなくても見る人が評価したということです。作品が紙によって生かされる、作品に合わせた紙は、会話の中から見つけられるものです。
紙を選定する場合、空気的な遠近法を用います。前進する温暖系、沈む寒色系 そして、中間色系で遠近が生まれます。作品を見たとき、我々は責任としてそれを表現する紙をセレクトしなければなりません。
インクジェットは、制作者・紙・機械が三位一体ではじめて発揮されるものなのです。
  寺沢) 当社の最新の大判プリンタは、8色の色をもってますが今回の作品展は短納期でしたので出力環境があるところが条件となり、一世代前の7色の大判プリンタでやりました。8色と7色との違いは、黒が2種類か3種類かの違いです。最新の大判プリンタは真っ黒、2分の1黒、 6分の1黒の3種類の黒を入れてます。この3種類の黒によりモノクロにおいては、素晴らしいグラデーションの表現が可能です。
通常のプリンタは、黒、シアン、マゼンタ、イエローの4色を掛け合わせますので、シアンぽくなったりマゼンタぽくなったりしますが3色の黒を使う事で淡い部分までのノーマルグレーの表現が実現できるようになりました。
  司会) スミ5%の世界ですか?
  寺沢) そうですね。色を混ぜてたものを混ぜなくなりましたので忠実な色再現性の向上と安定性がよくなりました。
  会場) 退色性については、いかがですか?
  寺沢) 色というのは、作った瞬間から劣化が始まります。劣化の速度をどう抑えるかですが色の元である顔料が紫外線で壊れていく度合いが従来の染料インクに比べはるかにゆっくりです。
太陽光に直接さらせれても約1年くらいは大丈夫です。それでは、短いではないかとお考えになる方がいらっしゃいますが写真との比較で云えば100年プリント以上耐久性をもってます。
  司会) 紙の今後についてはどうですか?
  大嶋) 開発の立場で紙に対して個人的な考えですけど科学文明の発達で、人々が本来もっている感性を見直さなければならないと思っています。 水・土・空気の中から紙の繊維からどう表現できるのか、入ってくる光と吸収される光を感じ、表面の質感を触らなくても感覚に問う、素材の感性のあり方、今の技術から逆行してこそ人の心を掴めるアナログ的な表現、触覚を大事にして行こうと思ってます。それは、自然からの応用です。そして、クリエイターの感覚を土台に研究開発してます。今回、クリエイターの方達にメッセージを載せてくれたことには感謝してます。
  寺沢) クリエイターの方は、パソコンの中でデザインされ、A3サイズのカラーレーザープリンタなどで校正はされたと思いますが、B1サイズの実物はここで初めて見たと思います。自分が表現しようと思ったものが本当に再現されているか現物をみなければ分かりません。しかし、今はデジタル機器の発達により自らが試すことが出来るようになりました。特にインクジェットは表現方法の中でインクの違い、紙の違いを訴えかけることができるようになりました。是非、ご自分でここまで出力してみて、ご自分が表現したいものを確認されることをお勧めいたします。もし次回のクリボラ展においてはクリエイターの皆様が表現したい素材を選び応募するともっとバラエテイに富んだものなるでしょう。インクジェットプリンタがそれを実現いたします。
  司会) ありがとうございました。

copyright(c)OAC.All rights reserved.