■「デザインのための紙と印刷・加工」講座 　第二回「紙」

日　時 ： 2008年5月16日（金） 会　場 ： （株）竹尾　三島工場 特別ミッション部会主催による本講座は、印刷をより深く理解することでOACのクリエイティブを向上させることを目的として、印刷に関連する業種の賛助会員によって企画されました。2008年5月16日（金）に開催された第二回のテーマは、印刷に無くてはならないもの「紙」です。 （株）竹尾の林 治雄氏を中心に企画された今回の目玉は、特種製紙株式会社の工場見学です。全六回の中でもっとも「工場らしい工場」を見学するために、参加者は早朝の午前8時に集合、静岡県三島市にむけて出発しました。東名高速道路を2時間半移動し、一同を乗せたバスは特種製紙の三島工場に到着です。 　 　特種製紙は高品質・高機能の付加価値の高い紙を生産する製紙会社です。私たちがよく知っている、マーメイド、タント、レザック、きらびき、玉しきetc.　_など「ファンシーペーパー」を生産しています。創業は1926年。沿革によると初期の製品として電気絶縁紙・吸取紙・岩波文庫表紙が挙げられています。現在も耐水紙・耐油紙・OCR用紙・通帳用紙・圧着ハガキ紙などの「機能紙」がファンシーペーパーと並ぶ製品の柱なのだそうです。 　まず最初のプログラムは、紙を製造する工程のレクチュアです。いかな高品質の紙と言えど、製造の基本は手漉きの紙と変わりません。植物の繊維を水に投じ、網状のモノで漉して乾燥させることが紙作りの基本です。マーメイドやレザックのように表情豊かな「ファンシーペーパー」も、素材品質や工程を改良し開発したものとか。 　 　次にいよいよ工場を見せていただきます。もちろん企業秘密保持のため撮影禁止。残念ながら工場内の画像はありません。かわりといっては何ですが、敷地内に展示されている戦前に使われていた石の「エッジランナー」を見てください。紙の繊維をゴリゴリ潰し、毛羽立たせて紙の強度を上げるための道具です。水力を動力にゴリゴリ動いていたのだそうです。 　 　工場内では数十メートルを超えるラインの上で一気に紙が製造されます。このラインは24時間止まること無く動き続け、停止するのは盆・暮れ・GW、年三回のみ。製品を切り替える際の清掃も動かしたままで行うそうです。レクチュアの通り、ラインでは紙繊維を含んだ液体から水分を搾り取り、乾燥させて紙を仕上げていきます。回転し、水が流れ、蒸気と熱が立ちこめる様は正に工場そのものです。騒音も大きいので、ガイド・スタッフの説明はレシーバーを使います。このとき生産されていたのはブルーのマーメイド紙。最終段階の検品は光学系の装置でチェックされます。なかには一目ではわからない不良品もあり、品質の高さを実感しました。 昼食後は特種製紙のショールーム・PAM（Paper And Material）に移動します。 　 午後のプログラムのはじまりは、竹尾の林 治雄氏の「紙に関するレクチュア」です。紙の発祥、紙の種類や大分類、目の話などをやや駆け足ながら、一時間でまとめていただきました。興味深かったのは印刷適性についてのお話です。印刷にFMスクリーンのような新技術が登場しているように、紙の側にも再現性を高めた新しい紙が登場しています。ぜひとも仕事で使ってみたいものです。 　 続いてPAMの館内の自由見学です。 特種製紙が創業より製造してきた紙のコレクションにはじまり、紙作りを支える技術の紹介、紙のサンプルと使用例など、紙愛好家・紙オタクならば夢中になってしまうものばかり。光がふんだんに差し込む空間のなかで、ふだんとは異なる時間が過ぎてゆきます。 　 最後の質疑応答で「再生紙と森林認証紙、どちらをお客様におすすめするべきでしょう？」と質問がありました。即答できるレベルの話題ではなく、スタッフの皆さんを困らせてしまいました。と、いうのもどちらも環境の保全に配慮した紙であり、それぞれ異なるロジックで成立している製品なので、単純に比較はできないからです。後から登場した森林認証紙の方に、より口当たりの良い「メリット」があるのではないか、と私個人は感想をもちました。主催者サイドでも印刷と環境についての問題を重要視しています。本講座の第六回で環境について取り上げたいと、現在計画中です。 　 第3回は6月20日（金）に開催。 テーマは「インキとシルク・UV印刷」（企画：東洋インキ製造）です。 まだ定員に余裕があります。 OAC会員の皆様の参加をお待ちしております。