THE ORGANIZATION OF ADVERTISING CREATION
OAC 社団法人 日本広告協会
NEWS! イベント&セミナー情報
インターネットビジネスワークショップ
■「第1回 Webビズ研」

日 時 2009年10月29日(木) 17時〜19時
会 場 モリサワ東京本社
主 催 社団法人 日本広告制作協会(OAC)
特別ミッション部会<インターネット委員会>
協 力 エプソン販売(株)、(株)デジタルスケープ、(株)Too、(株)モリサワ

Web担当者のためのビジネス研究会(Webビズ研)の「第1回ワークショップ」を開催いたしました。
本編に先立ってインターネット委員会担当理事の梅本氏より開会の挨拶。まず、このワークショップの目的である、OAC会員社同士の抱えるWeb制作や、サイト運営に関わるさまざまな課題を共有し、お互いのビジネスを成功に導くための「協業」「コラボレーション」について解説を行いました。
■第1部
日本デザインセンターから杉本瑞樹氏、鈴木啓太氏両プロデューサーをゲストスピーカーとして迎え、「Webビジネスの成功と可能性」について、アカウントと制作の立場からの視点で講演していただきました。

<杉本瑞樹氏/日本デザインセンター プロデュース室所属 プロデューサー>
予算の管理、制作人材のアサイン〜管理。グラフィックデザインの1部門として10名以下のメンバーでWeb制作を担当している杉本氏は、日本デザインセンターに転職した際にWebプロデューサーに転向されました。前職では主に、パッケージ関連のプロデューサー職を担当しており、Webプロデューサーとしての知識は殆ど無い状態に等しい状態だったので、最初はWebマーケティングやWeb制作におけるキーワードの理解から着手したそうです。
第1回 Webビズ研
第1回 Webビズ研
第1回 Webビズ研
基本を理解した後は、マーケティングコミュニケーションの視点を持ち、生活者の消費の現場が多様化し、常に変化している点に着目。Webサイトのメディアとしての成熟に伴い、あたかも万能なメディアであるかのような捉えられ方をされがちな現状にあって、Webは万能ではなく、情報を発信する側の企業も制作を請負う側の制作者も、Webを介したコミュニケーションにストーリーを持つことが重要と訴えました。
杉本氏の考えるアカウントプロデューサーの役割は、主に「与信管理」「決裁者の確認」「テーマの設定」にあると考えられているそうです。
そのポイントは、下記の2点とのこと。
  • 数値で現れる情報はその会社のWebサイトに対する姿勢を反映する。
  • 決裁までの最短距離を把握し、現場担当者と決裁者の齟齬の発生を出来るだけ回避する。
<鈴木啓太氏/日本デザインセンター Webデザイン研究所所属 プロデューサー>
Web制作をプロデュースする立場の鈴木氏からは、「無印良品」、「オルビス」などの制作実績の紹介がありました。
「無印良品」は、2002年のリニューアル時から受注し長期に渡って担当中。「リニューアル制作」や「新規ページ制作」「特集ページ制作」などを担当し、テキストメインの定期更新などの運用時に発生する作業は、無印良品社員が対応しているそう。ただ、杓子定規に社員との作業範囲を切り分けている訳ではなく、CSSレイアウトやHTMLコーディングなど、社内で対応が難しい作業に対する相談窓口や品質チェックなども無償で請けているそうです。収益には直接的に繋がらない部分でも、こういった関係作りが新たな提案に向けた課題発掘に役立っているのでしょう。
オルビス社からは、
  • 「無印良品」のような情報がキチンと整理された情報設計
  • チラシ的なビジュアル訴求力の高いデザイン
以上のように相反する2つの要望を受けたとのこと。
社内でビジュアルデザインを得意とするデザイナーを確保できなかったため、パートナー企業とのコラボレーションで解決。情報デザインを社内で担当し、チラシ的なビジュアルデザインをパートナーに担ってもらう、というスタイルで顧客の満足を得ました。
他にも、顧客の発注時に、直感的に意向を伝えようとするクライアントとの事例などを公開。論理的なサイトデザインのプレゼンが通用しない顧客担当者に対し、顧客意向をどうしたら具現化できるか、どうしたら制作者の意図を理解してもらえるか、という点を真摯な姿勢で解決。デザイン案がまとまらず収拾がつかない時に、お互いに思考を冷却する期間を設け解決に導くといった、請負側としては大変勇気の要る決断も経験したそうです。
講演終了後の質疑応答では、「社内へのWebの重要性の説得の方法は?」という質問がありました。
杉本氏の回答は、グラフィック系のデザイナーは一様にWeb制作に興味を持とうとしなかったり、自身の仕事が未知の職域へ拡大する事を懸念し、積極的にWeb制作の仕事に関与しようとしない傾向にあるとのこと。そういった点を解消するために、ブランド力の高い実績を残し、そういった事例を社内共有することで、Web制作の実態について社内理解を高めていくようにしている、とのことでした。
■第2部
「Webビジネスの課題」をテーマに、OAC会員社のプロデューサーやディレクターによる円卓形式でのディスカッションとなった第2部。第1部で講演をいただいたお二方にも参加いただき、8名のメンバーでディスカッションを行ないました。また、26名の聴講者も加え、熱い意見の交換が行われました。
まずは、司会進行の梅本氏からディスカッションのテーマについて説明。
「コスト」「人材」「制作ワークフロー」「社員教育」「品質管理」「料金体系」など、Webビジネスにおけるさまざまな課題がある中で、まずは参加者それぞれが抱える課題と自社の強みを共有するという流れでディスカッションがスタートしました。

<自社の課題>
  • 管理面での課題(コスト、品質、進行、人材リソース)
  • 紙媒体のデザインを如何にしてWebで再現するか
  • ITリテラシー不足からシステム開発が含まれた案件への対応が困難
  • 若手社員のディレクター職への育成が困難
  • グラフィック系社員とWeb系社員の世代のギャップ(グラフィックはベテラン、Webは若年層が多い)
  • コストバランスと多様化する顧客要望のマッチングをどう図るか
  • プロモーションに掛けるコストの全体的な減少でコストが厳しい
  • 作業量と請求額のバランス。作業工数の「見える化」が請求額の説得には重要
<自社の強み>
  • 運用更新案件が得意で売上構成比率も高く安定している
  • グラフィックとWebだけでなく映像コンテンツ制作にも特化しており、既にクロスメディア展開を推進している
  • 少子化→国内のクリエイターの減少→アジア諸国とのクリエイティブのコラボレーション模索中
  • 企業Web担当部門が、広報・コーポレートから宣伝部に移行するケースが増加。クリエイティブに対する理解が高まる
<コスト・料金体系>
  • コストの考え方→ページ数?ファイル数?作業工数?
  • 作業開始前の予算設計をしっかりとしておく。もし予定工数からオーバーする可能性がある場合は、作業を止めて交渉。
  • ある制作会社では、10年来工数(人月)で見積り提示している。クライアントが依頼してきた作業がコスト・見積に直結していることを認識してもらいたい。
    (制作会社はみんな「工数(人月)」で見積りを作成しよう!という意見もあり)
<品質管理>/<社員教育>
  • グラフィックデザインスキルをベースとしたWebデザインと、テクノロジー/プログラミングを背景としたWeb構築。これらを両立できる人材は、現在は非常に少なくなっている。一方で、約10年前(インターネット環境の拡大期)にグラフィックデザインを経験しWeb制作に転向したクリエイターは非常に多く、そういったクリエイター達が現在ではディレクター/プロデューサークラスの職にキャリアアップしている。
    このようなグラフィックとWebの両方を理解しているディレクター/プロデューサーの下で、デザインとHtmlコーディング、プログラミングを分業し品質管理の課題を解決していく、という方法が最善ではないか
  • 社員のスキル教育も、グラフィック系クリエイターへのWeb技術の教育を行うだけでなく、Web→グラフィックも重要。品質管理と社員教育は表裏一体の課題である、という意見も。

最後に、第2回のワークショップでのディスカッションテーマを共有しました。
  • Web、グラフィック、映像制作編集のクロスメディア展開を如何にして訴求し、受注につなげるか意見交換したい。
  • コンペへの参画企業が増加し、参加企業のジャンルも多岐に渡っている(同業の制作会社以外にメディアレップ系、代理店などが競合になる事が増加)。その中でどのように差別化し、受注していくのか意見交換したい。(営業展開の視点)
  • 制作ワークフローを策定することの効果について。ワークフローにおけるデザインワークの制約と自由度の課題をどのように解決するのか?(制作ワークフローの視点)
  • モバイルコンテンツ制作の実態について知りたい。
以上のポイントから、今後、Web制作ビジネスをどのように拡大するかという営業的視点と、メディア領域の多様化(グラフィック/Web/映像/モバイル)と表現の融合の課題、システム開発の関連する制作案件への対応方法等について、今後もディスカッションを進めていきます。

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