THE ORGANIZATION OF ADVERTISING CREATION
OAC 社団法人 日本広告協会
NEWS! イベント&セミナー情報
■ 第4回 Webビズ研

「明日のためのWebトレンド講座+交流会」

日 時 2011年2月15日(火)17時〜19時55分
会 場 エプソン販売株式会社 本社
講 師 本間充氏/花王株式会社 Web制作部 Web技術グループ グループリーダー 安田英久氏/株式会社インプレスビジネスメディア Web担当者Forum編集長
主 催 社団法人 日本広告制作協会(OAC)
特別ミッション部会<インターネット委員会>
協 力 エプソン販売株式会社、キャノンマーケティング株式会社、株式会社デジタルスケープ、株式会社Too、株式会社モリサワ、テンプスタッフ・テクノロジー株式会社、特定非営利活動法人 日本ウェブ協会

Web担当者のためのビジネス研究会(Webビズ研)の、2010年度最後となるセミナーが催されました。本編に先立って、日本広告制作協会理事長、鈴木清文氏より挨拶。最新のWebトレンドの勉強の場として利用して頂き、持ち帰ったヒントでビジネスを成功に導いて頂きたいとの主旨説明を話されました。

■ 第1部 花王のWeb戦略とその制作方法

本間氏のレジュメはこちら(OAC会員の方のみご覧いただけます)

ゲストスピーカーに、花王株式会社の本間充氏を迎え、マスを中心にコミュニケーションを展開する花王での、Webの基本的な企画方法や、企画・設計・制作に於いて、パートナーと、どの様な視点で取り組まれているのかを、講演して頂きました。

「変化は、時間がたてば必ず起こる」
マスメディアの現状を見ると、テレビの視聴率は低迷を続けている、雑誌の発行部数は下がっているし、休刊するものも多い。紙が勿体無いから、新聞は取らないといった価値観が出てきている。また、今後はインターネットクラウドをキーワードにした、新しいメディアが登場するだろう。変わり行く時代の中で、Webに求められるものは何かを我々は考えていく必要がある。

「ユーザーが何を知りたいか、予測してサイトを構築する必要がある」
Webサイトのコンテンツの設計方法は、とても重要。例えば、下着とランジェリーは同義語だが、ランジェリーの方が圧倒的に検索で使用されるワードだ。さらに言うと、男性用化粧品のワードは、メンズコスメであるべき。男性で化粧品に興味がある層は、自分の事をメンズと言う事を知っておく必要がある。こういった点をよく理解したうえで、コンテンツの設計を考えてほしい。

「企業にとっては、難しい時代」
米国では、報道官や大統領が記者会見より早くツイッターで発表を行っている。また、あるオリンピック選手は、記者会見を経由せずに自分の意見を言うばかりでなく、現場の雰囲気を記者に代わり伝えている場合もある。
この様な活用のされ方をしているソーシャルメディアは、メディアではなく、コミュニケーションスペースである点に注意が必要だ。どういった事が起こるかと言えば、ブランドの定義が企業によってではなく、ユーザー自身によって定義されていく場合もあり、企業にとっては喜ぶべき面もあるが、難しい時代となってきている。

「KPI! KPI! KPI!」
KPIが異なれば、戦略(手法)も異なる事を認識してほしい。そのために、どの様な指標を設けて分析していくかが重要。
花王では、TVコマーシャルで「かわいい」というワードを連呼しても、サイト訪問者はほとんどこなかったが、サイトの説明を5秒入れてもらう様に作り直したところ改善されるといった事があり、指標が有効に活用された例もある。

KPIとは、業務の達成度を定量的に把握するための指標のこと。
Key Performance Indicatorの略で、「重要業績指標」と訳される。

「パートナーへ期待していること」
当社では、一旦プロジェクトがスタートすれば、終了するまで同じパートナーへ任せるスタンスなので、中期的にお付き合いが可能となる、改善提案力にも期待したい。

以上、本間氏よりクライント視点からどの様なことを考えているのか、またパートナーへ期待される事についての講演でした。クライアントの立場から、この様なお話を伺う機会は、制作側にとって大変貴重なため、会場では熱心にメモを取る方が多数見受けられました。

■ 第2部 ネットマーケの最新動向から考える、企業のWebコミュニケーション

安田氏のレジュメはこちら(OAC会員の方のみご覧いただけます)

ゲストスピーカーに、株式会社インプレスビジネスメディアの安田氏を迎え、最近取り組まれるようになった、Webコミュニケーションのトレンドを、技術やコミュニケーションデザインの視点から振り返り、一歩進んだWebコミュニケーションを行うためのヒントについて、キーワードを6点取り上げて講演して頂きました。

(1)「リードナーチャリング(見込み客の育成)」
サイト上から資料請求した方が、どの様なコンテンツを見たのかを精査して、ゴールデンルート探す。また、お客様の知りたい事、したい事、やりたい事をよくリサーチした上で、お客様がどのページからサイトへ訪れても、目的のページへ誘導する仕組みを構築する。ユーザーのシナリオを考える事がナーチャリングでは、一番大事である。

(2)「アトリビューション」
今のアクセス解析は、コンバージョン直近のデータしか見ていない。本当にそれで良いのか? 本来であれば、直近の行動以前に、ユーザーがどのように動いたかのデータを取得して、検討しないといけないのではないかという視点で考えられた間接効果測定方法。現状は得られるデータが限られており、仮説の検証がメインである。

(3)「広告クリエイティブやページデザインの自動テスト」
デザインの最終決定が、本質的な意思決定のプロセスを踏まずに経営者の趣味嗜好で決まるような事はありませんか。それって何かおかしい・・・。
ただそれには作り手が経営者を説得出来ないという要因もあります。それならば、説得するデータを取得すれば良いという考え。無料のツールもあるので、試してみてほしい。

(4)「ソーシャルCRM」Social Customer Relationship Management
お客様との関係を構築するための1つのツールではないかと考える。参考知識として、知っておいて頂きたい。

(5)「リスティング広告の自動管理」
自動入札ツールの応酬で、1クリック、1万円にまで価格がつり上がったなんていう事は、過去の笑い話。基本的には、広告代理店向けの仕組みだが、参考知識として、知っておいて頂きたい。

(6)SIPS
ソーシャルメディア時代の新しい生活者消費行動モデル概念。AIDMAやAISASとの最大の違いは、アテンションが省かれていること。この概念では、ユーザーが居るSNS上でいかに、ブランド情報への共感を獲るのかが大事。今後は、トータルコーディネートを心がけないと、厳しいとも感じている。

以上、安田氏より、今後のWeb戦略を考える上で、軸となりそうなポイントの講演でした。
新しい技術・考え方が次々と生み出されるWeb業界に於いて、大変参考となる情報をお聞かせ頂きました。

■ 第3部 必見!“本音”で語るWeb制作会社とのおつきあいについて

Q「広告主の立場から、検索ワードとソーシャル上でのワードの違いをどう考えるか?」

本間氏
「育毛剤を探している人が居たとして、その方は「禿げ」、「薄毛」というワードはあまり打ちません。負けた自分を意味するワードだからです。それよりは、「育毛」と打つ方が多いです。成功した自分をイメージするからです。検索ワードが、負けた自分、ソーシャルワードが成功した自分という意味合いの違いでしょうか。言いたい事とやりたい事を考えれば、分かってくると思います」

Q「パートナーとの業務の切り分け方は、どの様にしているのか?」

本間氏
「Webの制作は、社内、社外との調整が多岐に渡るものなので、パートナーにはWeb戦略の立案から絡んでもらいます。
花王の基本的なスタンスとして、ブランド立上げ時に付き合いはじめたパートナーには、ブランドが無くなるまで付き合っていただくスタンスです」

Q「パートナーへ依頼する意味とは?」

本間氏
「Webの分野は多岐にわたり、専門性が求められる様になっている。社内で出来ない事が増えているので、ターゲットを良く見極めたうえで、お任せすることにしている」
安田氏
「新しい技術・考え方がどんどん出てきている。こういった事を、全て社内で実行できることは稀。現実的には、社内対応のみでは無理ではないか。極端な言い方だが、素人にもWebは作れるが、クオリティは低くなるということだ」

Q「会いたくない営業とは?」

本間氏
「こちらの悩みをしっかりと聞き、本質を把握してもらってから質問してくるといった、基本が出来ていないとお断りする場合が多い。また、自社の強みをハッキリとさせていて、継続して取り組んでいると信頼性が高まると思っている」

本間氏、安田氏共に、軽妙な語り口で次々と話題が飛び出し、参加者が引き込まれていく様子がよくわかりました。最後は、会場全体がまだ話を聞き足りないとう雰囲気の中、閉会の時間が迫り終了。今年度の最後を飾るにふさわしい内容となりました。

第4回 Webビズ研 アンケート集計


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