THE ORGANIZATION OF ADVERTISING CREATION
OAC 社団法人 日本広告制作協会
NEWS! イベント&セミナー情報
■教育現場と制作現場を結ぶ情報交換会2012 開催報告

開催日:2012年9月7日(金)14:00〜17:40
会場:武蔵野美術大学新宿サテライト

参加学校・会社
【学校】
・女子美術大学・デジタルハリウッド大学・町田・デザイン専門学校・東京デザイン専門学校・御茶ノ水美術専門学校・日本電子専門学校・大阪コミュニケーションアート専門学校・横浜デジタルアーツ専門学校・東京工科大学・東京工芸大学・東京デザイナー学院・東洋美術学校・日本デザイナー学院・日本工学院八王子専門学校・武蔵野美術大学
15校28名

【制作会社】
・鰍`DKインターナショナル・潟Jヤック・潟Rンセント・潟Rンテンツ・潟Aクロバット・ソラソル梶E潟Gージー・泣uレインカフェ・潟}スメディアン・潟yンと鍬
10社11名

【東京学生広告研究団体連盟】
・法政大学
・日本大学
2校 6名

- 第1部 -
大学・専門学校におけるWebデザイン教育
3名のパネラーの方に、それぞれの取組みなどを語っていただきました。

■東京工科大学 デザイン学部教授 若林 尚樹氏
デザイン思考を身につけることに主眼をおいて取り組んでいる。「問題となっている物事の本質を見極め、目的のためにそれを改善、解決していく方法をデザインの視点で考える」。そんな学生を育てていきたい。そのために、デザインにとって必要な感性を身につけ、その感性を発揮するためのスキルを学んでもらう。感性演習のサイクルとしては、「描く→伝える→つくる→関係づける」。スキル演習では、テーマを設定してスキルの向上を図る。デジタルに特化した内容と言うよりは、まずは基礎力としての感性、デザイン分野に必要なデザインスキル、分野をまたがる広い専門性を身につけ、より実践的な学びの場にしたいと考えている。


■日本工学院八王子専門学校 Webデザイン科主任 藤田 祐子氏
専門学校ということもありますが、入学してくる学生がデザインへの思い入れが強いかと言えば、必ずしもそうではない。まずは、デッサン・グラフィック・立体物など幅広い分野の基礎デザインの取得に1年次は取組み、Webで言えばHTMLやCSSなどの制作実習を行っている。2年次では専門領域を深く学ぶ時期として捉え、Webサイトも社会的接点の強い作品をつくるように指導しています。社会性という視点でみると、企業に課題を出していただき、その課題に対してプレゼンテーションを行う機会を設けるなど取り組んでいます。


■潟Rンセント 伝わる仕組み開発室室長 川ア 紀弘氏
川アさんからは、制作会社としての「生の声」ここまで言って大丈夫?と思える部分まで紹介していただきました。

2013年度新卒採用に向けて求めた人材

○Webディレクター
・メディア研究を行っていた文系学生
・デザインのみにこだわらない、デザイン系学科の学生
・テクノロジーだけではなく、メディアやビジネスやデザインに対する関心が強い、もしくは活動を行っている理系学生
○Webデザイナー
・ジャンルを問わず抜きんでた才能のある美術系学生
・デザインジャンルにこだわらない、広義のデザインを理解している美術系学生
・プレゼンテーション<トーク、ボード(見せかた)>力の高い、理系、美術系の建築を専攻している学生

応募者の傾向
・ディレクターを志望する美術系の学生もチラホラ
・いわゆる「デザイン力」は少々落ちる
・バランスのとり方が「個性」になってきている
・Web上でのアイデアやからくりをプロトタイプレベルだが実装を実現化できている学生も。
・プロダクトデザインからの応募も増えた

*アイデアレベルでこうしたいという意思が見受けられて、その結果こういう見え方、コミュニケーションが可能と言える学生は実際の技術はなくても評価は高い傾向にある。

新卒採用の方法を知らない会社も多い
・新卒採用のメリットがよくわかっていない
(例)5年後の会社
制作会社でも高年齢化は進んでおり、平均年齢が高まりつつある。
中途採用で即戦力を求めることもあるが、会社への帰属意識などの課題も含め、中長期的視点をもっと持つべき。
・教育の視点がない
*制作会社は日々忙殺される傾向にあり、計画的に社員教育を施す時間的な余裕が持てない傾向にあるのも事実。逆に言うと、その視点を持って中長期的な視点で人を育てようとする会社になりたいとは思ってはいるはずです。

Webデザイン教育に関しての提言
・Webデザインは「デザイン学科」の枠に収まらないのでは?
・デザイナーではない職業選択も理解させる必要があるのでは?
・いわゆる「課題」の出し方を変えてみては?
・Webデザイン上でのグラフィックデザインの実現状況をもっと見せる必要があるのでは?

上記3名のパネリストの方の取り組み等の紹介に引き続き、パネルディスカッションへ。

Q.Webデザインがテーマですが、実際に学生は授業を理解して取り組んでいるのでしょうか?
●カリキュラムにはついてきているが、本当に考えて主体的に動いているのかは疑問です。Webは見るもので、そこに思い入れはさほど深くはないと思います。
●中村勇吾さんのことすら知らない学生は大勢いる。
●Webに興味はあるが、「Webデザイン」に興味が無い。もっと格好の良いものを学生に見せて、Webデザイン分野の良さを気付かせてあげるべきではと、ある教授から言われたことがあります。

Q.先ほどの川アさんの提言の中の、Webデザイン教育はデザイン学科の枠に収まらないのでは?と言う内容に関してはいかがですか。また、別の職種もあると指導することも大事ではということに対してはいかがでしょう。
●映像、音楽、エディトリアル、ゲーム・・・様々な要素が入り込んできていますよね。その意味では、総合的な側面があると思います。
●デザイン系の学部を出て別の職種に就くことはマイナスではないと思います。デザインの世界を離れてあるNPO団体に移った人がいますが、そこでもデザインのことを担当している。まあ、それは単純なものの見方ですが、先ほど東京工科の若林先生のおっしゃっていた「問題となっている物事の本質を見極め、目的のためにそれを改善、解決していく方法をデザインの視点で考える」と言う考え方は、それに通じるのではないでしょうか。

Q.この会では、毎年学生のコミュニケーション能力とか、主体性の話しが出てきますが、先ほどもその部分が出てきました。
●入学してくる学生は何かしらの「タネ」を持っているはず。課題をこなすだけではなく、自分で主体的に好きなものに取り組めること、そのようにさせていくのが課題だとは感じています。

Q.その他、感じていることは?
●Web系の制作会社はスピード感がありますね。駄目なら直せばいい、と言う考えが浸透しているのでしょう。
●テクノロジーとアイデアの融合という側面から見れば、例えば手描きはうまいがイラストレータでの表現スキルが無い人はいると思う。アイデアは出せるがスキルがない。逆もあるでしょうが、Webにも同じようなことが言えるのではないでしょうか。

- 第2部 -
フリーディスカッション
参加された方、全員参加でのフリーディスカッションです。

Q.どんな人材を制作会社は求めるのか?
●Webに関しては、スキルには固執しない。技術は日々進歩しているので。
●昔、DTPのデザイナーは叩かれた。「デザインされていないじゃないか!」。ただ指示通りに、レイアウトしているだけで見た人にどう伝わるのか、どういうフォントをどう使ったら伝わるのか・・・デザイン思考がなくて「手」としか見られていない時代があった。現在のWebデザイナーは、極端なことを言うと以前のDTPデザイナーと同じではないか。やはり、スキルだけの世界ではないと思う。
●「デザイン思考」に関して言えば、やはり深く考えていかなければいけないと思う。東大や慶応などでも行ってきているので、何のためのデザインなのか、考えて学んできている学生は今後も必要になってくる。
●自分のポートフォリオサイトを作って見せてくる学生は採用しづらい。Webにはそれ特有の面白さが、楽しさがあるはず。そこに気付いてくれたら更に面白いものが出来てくるはず。また、採用に関しては、広告的なデザイン、情報デザイン系の方ではなく、単純にiPhoneアプリが好き!など、そこでの面白さに気付いている学生を採用している。
●Web好きな学生が少ない気がする。本当に好きで、ワクワクしながら就職に向かってもらいたしし、スキルの向上は入社してからでも構わない。

Q.制作会社でのWebデザイン担当の現状は?
●演出力のある社員はいろんな側面に対応できている。技術は陳腐化していくのが当たり前で、やはり新しい技術も好きで吸収できる社員は生き残れる。
また、徹夜をするものも当たり前だし、変化についてこられる社員が生き残っていける。学生には、そのあたりの現実も伝えていくべきではないかと思う。
●会社に入ってから勉強していない者は、それこそ変化に対応できない。また、Web会社へ入社した者と会うとその度に、名刺の部署が変わっていたりする。どこへ行っても変化に対応できる、学ぶことの基礎力は大切ではないかと感じている。
●Webデザインの仕事って、プログラマーの世界に近づいていく気がする。技術は変化し、それに対応できないといけない。でも、自分が出来なくてもそれを使える者と組んで、どう相手を喜ばすことが出来るかはテクノロジーとデザイン(アイデアや企画)力を持っているかどうかで変わってくる。

等々、活発な議論が交わされました。
最後には本日の参加者同士で名刺交換を行い、今後の個別での情報交換への糸口もつかめたのではないでしょうか。


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