THE ORGANIZATION OF ADVERTISING CREATION
OAC 社団法人 日本広告制作協会
NEWS! イベント&セミナー情報
■経営部会セミナー

『学生はなぜ広告制作会社を選ばなくなったのか』

5月の経営部会のテーマは「広告制作業界の人材不足」。デザイナーやADを中途採用で募集しても、応募してくるのは中高年の方が中心。新卒採用についても応募者は激減しており、多くの優秀な美術系学生が、ゲーム会社やネット企業へ、またはクライアント側へ就職しているような状況が続いている。これには、昨年の電通の事件もあり、もはや広告制作業界はブラック企業の集団だと思われているのだろうか。
今回は、美大・専門学校の就職課担当者5名の方にお越しいただき、現在の学生の動向・考え方・思いの実状をお聞きしました。

■参加校
女子美術大学 キャリア支援センター  樋口 正紀 氏
女子美術大学 キャリア支援センター橋本 十太朗 氏
多摩美術大学 就職課西田 修 氏
東京造形大学 進路支援センター堀川 真吾 氏
武蔵野美術大学 キャリアセンター澤野 誠人 氏
東京デザイン専門学校 就職課石川 和宏 氏

現在の学生の就職に関する意識・広告業界に対する関心等について

【女子美術大学】

大学全体で約2400名、一学年600名の学生が在籍している。
学生の就職に対する意識としては、高校の時から就職を意識している学生が保護者を含め多い。特に大学の就職率や支援体制が問われている。
学生からはインターンシップに関する質問が多く、在学中に企業との接点を求めているという傾向が強い。また、美大は学費が高いということもあり、一般の事務職等ではなく収入にも直結するクリエイティブな仕事に就きたいという学生が多い。
一方で、電通・博報堂が行っている学内選考会では、かつては60〜70名が参加する盛況であったが、昨年は15名しかエントリーしていなく、電通事件の影響もあるのか広告業界を敬遠して就職活動をしている状況にある。
また昨今、Web系の素養もほしいと言った声もあるので、理系の授業も取り入れるようにしている。

【武蔵野美術大学】

きつい業務を避ける傾向にあり、安定を求める志向が強い。現在は一学年1000名だが女子学生の割合が7割と高いこともあり、仕事だけではなく結婚や出産といった将来を含めたライフワークバランスを強く意識している。当校でも電通・博報堂の学内選考会はあるが、選考レベルが非常に厳しく本当に広告代理店や制作業界が良いのだろうかと疑念を抱いている学生が多い。また、電通や博報堂といった業界のトップを目指すにはそれなりの覚悟が必要になるが、最近の学生は決して心が強いわけではないので、広告業界全体を敬遠している感がある。

【東京造形大学】

在学生アンケートによると、6〜7割は就職について興味があるが、実際に就職活動スタート時に動き始めるかというと遅い傾向がある。実態としては、どうやって動いていいか分からないのと同時に、いつでも就職できるのではないかという意識が強いようだ。
他大学と同じように学内選考があるが、年々参加率が下がってきている。選考に参加するための作品制作やポートフォリオに時間が割かれてしまうために敬遠して諦めてしまう傾向がある。
電通事件については直接的には意識していない学生が多く、実際にどういった仕事をしているのか分からないとと同時に、仕事をしてその評価として、自分の名前が世間に出るのかどうなのかという点を意識しているようだ。加えて、仕事の内容よりは待遇や給料・残業等を重要視している。

【多摩美術大学】

就職に対する意識はあるが、何をしたらいいのか、どういった業界や会社がよいのかハッキリしていない学生が多い。その中でも、広告業界に就職したいという学生は、比較的早い段階から意識しており、その他の学生とは違いが出ている。
広告業界に興味が無いわけではないが、ひとつの選択肢というレベル。情報が過多になっている傾向があるので学生は悩んでいるが、6〜7割はやはりデザイン系やモノ作りの仕事に就きたいと考えているようだ。

【東京デザイン専門学校】

一学年400人いるが、グラフィックデザイン・ビジュアルデザイン学科で約200名程、卒業生75%が就職を希望しており就職意識が高い。大学と違い2年制なので作品数等においては不利な状況にあるようだが、広告制作業界に就職するのは4割ほどいる。
なお、当校も女性が7割という状況である。Web業界であったり、安定している企業内の販促部等を希望している学生が増えてきている。

■意見交換

  • Q. 女性の学生が多いとのことだが、制作会社で募集をかけてもほとんどが女性。
    男子学生はどこへいってしまったのか?デジタル化も進んでいるが大学の現場ではどの程度教育しているのか?
  • A. かつてと違って業界が多様化しているので、広告代理店や制作会社だけを受けていくというような括りがなく、IT会社やメーカーといった幅広いエントリーをしている。そもそも論として、美大を受ける男子学生が少なくなっている。
    デジタルに関してはイラレやフォトショップは必修であったり、資格等を取る支援をしているが、学部やコース・カリキュラム、担当教授によって大分差があるようだ。
  • Q. 学生自身の考える力が低下しているのではないか?作品に中身がないので一見恰好よく見えても採用に至らないことが多い。
  • A. 情報過多ということもあり、就職に対して今の学生は自分で動こうとしたり探そうとしていない。そのため自分で何をして良いか分からず取捨選択できない学生が多い。
  • Q. 10月に内定を出しても直前で蹴る学生が多く、会社として採用活動に支障出ている。
    学校の指導はどうなっているのか?
  • A. 誓約書や基本ルール等の指導はしてはいるが、なかなか守らない学生が多く難しい。一般大学の学生が複数内定を貰っているというような状況も耳にし、開き直っている感もある。学校としても無理に押し付けるわけにはいかない現状がある。

    ・新卒を採用しても戦力になる前に辞めてしまうので、中途をメインに採用活動をしている。新卒採用を止めたわけではないが、会社判断として必要。
  • Q. 業界のイメージ・労務問題等について
  • A. 先輩や同僚に離職者が多く、SNS等で発信共有されることで今の広告業界はハッキリ言って人気がない。会社が正しい情報を伝える必要があるのではないだろうか。学生はイメージで判断する傾向にあるので、今、広告業界に付いているイメージは1〜2年では回復しないと思われる。広告業界の素晴らしさや面白さをもっと学生に伝えれば、就職を希望する学生は増えていくはず。企業にとっては大事な学生なので、しっかり見て欲しい。
  • Q. 大学では理事会、教授会、事務局等が複雑に絡み合っているが、学内では社会人としてどのように教育をしていこうと考えているのか?
  • A. 美術大学が持っているコンテンツで企業や地域と繋がったりしており、学内だけでなく外で学ぶということも求められている。また、就職した先を見据えてキャリア教育を念頭に置いている。 大学の実態として、以前は入試で落としていたレベルの学生を入学させているという現状がある。教授会と理事会、教育と経営の狭間で難しい問題ではあるが、就職課としてはまず就職率を上げたいという思いがある。レベルの個人差があるので高望みはせず、デザイナーでなくとも販売員でも構わないと考えている。
    本来は大学の中で低いレベルの学生の能力を上げなくてはならないというのが大学の理想形だが、学校法人が経営している一方で教授会の古いアカデミックなスタンスも課題になっており、どういった先生を選んでいくかといった大学内の組織の問題もはらんでいる。まだ入学の定員割れをしていないのでそこまでの危機感が学内にはなく、日本画の教授などは新入生に対し「就職はしなくてもいい」と言い切ってしまうケースも見受けられ、教員の就職に対する意識のズレも問題だと認識している。
  • Q. 選考スケジュールに関して   内定取り消しなどの問題もあるが、いつごろ採用試験などを行ったほうがよいのか?
  • A. 大手の広告会社先ほど話に挙がったように、3年の後半に学内選考会があり、その時点では意識の高い少数のみがトライしている。実際は、4年生になっての今の時期頃(当セミナーは5月実施)から動きだしている。夏休み時期は、学生に情報が行き渡らない場合もある。また10月(大学よっては11月)頃の学園祭時期も没頭するのが美大生の傾向としてあるので、その時期は難しい。そして最後には、卒業制作が待っている。
    これを踏まえると、選考を2回行うのも手ではある。今頃の5月〜6月と、卒業制作の目途のつく、1月、2月も可能性があると思う。また、卒業制作をしてから動き出す学生も多くいることもあり、就職活動を行っていないから駄目な学生かというとそうでもない。可能性はある。

学校側からの質問

  • Q. インターンシップ等、学生との接点を増やしてほしい
  • A. インターンシップは時間と手間が大変かかり、更にはPC貸与や守秘義務等の問題も関わってくるので、今後は形を変えていかないといけない。

実際に学生と接している就職課の方々からお話を聞くことができ、今の教育現場の情報を共有できる貴重な機会となった。大学全入時代となった現在、リアルな経営判断とアカデミックな教育の面において相反する部分も課題だが、美術大学という専門性の高い大学に入る学生側も卒業させる大学側も、双方レベルを下げるのではなく上げてもらうと同時に、我々もそこに積極的に携わっていくことが今後の広告業界にとっては不可欠なのではないだろうか。

(事務局より)
第二新卒に関する制作会社のニーズが高いとのアンケート調査結果に基づき、その対応方法についてもお話しを伺ったが、出来うる限り卒業生との連絡をとる学校、なかなか把握できないといった学校と様々ではあったが、制作会社としてのニーズも伝わったのではないかと思う。


「OAC専用求人票」の活用は、制作会社、学生・学校双方のメリットを考えて実行。
学生にとっては、公益社団法人日本広告制作協会のことはあまり知らなくても、そういった団体に所属しているから安心であろう。その観点で読み取る材料になるであろうし、制作会社にとっては、若い人材の目に留まる、安心感を与えるものになると考えています。

6月現在で、3社が事務局を通じて会員学校へアプローチをしています。
ぜひご活用ください。

copyright(c)OAC.All rights reserved.