THE ORGANIZATION OF ADVERTISING CREATION
OAC 社団法人 日本広告制作協会
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■経営部会セミナー

『たき工房』

今回は経営部会の勉強会として、TAKI PRODUCTSの開発など、受注型一辺倒から、自社で商品開発・販売にも取り組む、たき工房さんを訪問し、その実態をお聞きする機会としました。

たき工房の概要

たき工房は1960年に現相談役で25歳のときに大丸宣伝部から独立した滝澤方美氏が設立。現在85歳となるが、今でも毎日出社して、社員に声をかけてまわっている。

電通との付き合いは、滝澤氏が大丸宣伝部時代に付き合いがあり、当時銀座にあった電通の宣伝技術局に営業したのが始まり。車・流通関連の仕事を中心に受けていた。 現在たき工房は約240名程度、その内制作スタッフは180名程度。
会社案内にはあえて、DESIGN AGENCYと入れている。

組織体制

制作スタッフ180名は目的別に分かれている。

  1. クリエイティブデザインユニット 100名
    グラフィックデザイナーを中心に新聞・ポスター・カタログ制作、OOHデジタルサイネージやWeb制作などのデジタル分野も対応
  2. コミュニケーションデザインユニット40名
    大手代理店と共同でプレゼンにあたるチームとして、代理店のクリエイティブを代行する。
    クリエイティブディレクター、アートディレクター、インタラクティブ、コピープランナーの構成でプロモーション計画などを実施。
  3. 開発チームブランディング7名、プロダクト5名、映像5名、

その他テクノロジーエンジニア、デジタルサイネージやOOHなどサイネージに関わるプログラムなどの品質管理を担当するエンジニアが4名(フロントエンドエンジニア)。そのうちデザイナー出身が2名。

現在、離職率は8%。
役割定義書を作成し、行うべき役割を明確にした。また役職別に体系図を作成。

「変わろうとする」というより、「変わらなければならない」。

「変わらないと生き残れない」という危機感から。それぞれに技術を持った社員が5年後、 10年後も楽しく活躍できる会社になるために、いま始めなくては間に合わない。そこで取組み始めたことを皆さんに紹介し、少しでもヒントになれたら幸いです。

なぜデザインエージェンシーを標榜したか。

  1. ① 内外の要因⇒生き残りのため
  2. ② 私たちの武器=デザインの可能性
  3. ③ 広告の枠もはみだすという選択

コミュニケーションの在り方が大きく変わった現在。デジタルでのコミュニケーションは、弊社が携わってきた代理店を通したビジネスから、直クライアントとのビジネスへとシフトしだした。また社内でも優秀なクリエーターが代理店のもとではなく、自身がディレクションできる機会を得て、やりがいと成長、そして会社への定着が見込めるようになってきている。
さらに私たちが主な武器としてきたデザインがその本質を見抜き、わかりやすく心を動かす形にして伝えるという機能が、これからの社会の役に立てるのではないかと考えた。
全ての領域をデザインで可能にする。それを念頭に、デザインエージェンシーたき工房を目指している。

とにかくやってみよう。やってみることのできる会社へ

  • ○「ブランディング」を切り口にセミナー、ワークショップで直クライアントと接点を持つ。
    現在プランニング部は7名。直クライアントに向けて提案している。しかし1施策だけ提案しても、クライアント担当者が会社全体の方向性を理解していない場合もあり、なかなかうまくいかなかった。
    セミナーなどを開催し、そこでつながった人たちに、会社全体のブランディングを、コンサルとも違う、見た目から入るブランディングという形で提案している。
    https://www.taki.co.jp/news/bdseminar0627
    なお、本事業は3年目。これから軌道に乗せていきたい。
  • ○ TAKI PRODUCTS
    『人に伝えたくなるプロダクツをつくろう』をコンセプトに、社内で公募した作品を製品化。これを始めてから学生を含め、たき工房の認知度も向上し、リクルートにもつながり、ブランド価値も高まってきている。
    社内公募では年間で50〜100点ほどのアイデアが集まり、その中から製作可能かどうかを吟味し、1年で5点ほどを実制作に回している。デザイナーにとっても、創ったものが世の中に出る可能性があり、モチベーションアップにもつながっている。
    なお、現在はLOFTやニトリでも販売しているが、主に展示会に出展してそこで様々な店舗との繋がりができて、そこがベースとなっている。
    しかし、全て投資なのでそう簡単には安定した売り上げベースには乗らない。2年に1度くらい当たれば、開発費を回収できるくらい。
    http://www.taki.co.jp/taki_products/
  • ○ SMILE DESIGN LABO(たき工房の社会貢献活動)
    デザインのチカラがみんなを笑顔にするをコンセプトに、現在までにアフリカの子どもたちにアートのワークショップを開催したり、スカーフをつくって売り上げの一部を開発途上国の支援に充てたり、そして日本でも絵本をつくったりと様々な活動を行っています。
    http://taki.co.jp/smiledesignlabo/#project

    たき工房×品川女子学院「28歳の自分の名刺をデザインしよう!」
    http://www.shinga-farm.com/study/28project/

    MISIAの里山ミュージアム2018
  • ○ 映像系の仕事
    映像系の仕事が増えてきた。TVCMは年に数本程度だが、WEB動画やOOHのサイネージ動画など多い。映像チームは4名、プランニング・演出などはグラフィックのディレクターが担当していて、それが独特の味となっていると思える。

見えるかたちで、会社の本気を社員に宣言

  • ① 組織体制の刷新
    社員にもデザインエージェンシーに変わろうとしていることを自分ゴトとして実感してもらうために、今年度は組織体制を大きく変えました。大きくはディレクター中心のクリエイティブチームに、より権限と義務を持たせ会社をけん引する実感を持たせた。また少し未来のビジネスをつくるチームを開発部門と位置づけ、その意義を明確に打ち出しました。
  • ② 人事制度の刷新
    次に人事制度では、評価の基準、それに伴う報酬を明確化。自分で目標を設定しその達成度で賞与が決まる自主性を取り込みました。
  • ③ オフィスの改装
    さらにオフィスも、よりクリエイティブな発想が生まれる拠点になるべく改装をしています。

いずれも、社員ひとりひとりにデザインエージェンシーという大きな傘のもとで、何をすれば変化の中で自分が生き残っていけるか、自立心とやる気をもってもらうことを目的にしている。

そして次の課題へ向けて

  • ① 営業手法の見直し
    ここまでの活動で、新たな課題と浮かんできていることを3つお伝えする。1つめは、これまでの営業手法が通用しなくなっているのではないか、ということ。欲しい情報が自分で探せる時代、働き方や生産効率が言われる時代に、御用聞きやできることのカタログを見せる営業はいらない。必要としている人に必要なタイミングで営業をかける、またニーズを普段から育てることが必要ではないかと考えている。
  • ② 自社の広報PRの推進
    顧客に自社を「自ら見つけてもらう」(プル型)ことを目指すのが「インバウンドマーケティング」の基本的な考え方。自社の広報に関しては、このやり方を模索していきたい。
  • ③ 社内で育成できない人材の確保 
    さらにこれらの新しい試みの中で、社内の中で育成が難しい人材をどう確保するか?
    人を入れれば解決ということではないが、採用者の視点さえ陳腐化しているという指摘もある。(新しいもの・コトを生む人材を見極める人がいない)まだ実績のない弊社へどう呼び込むか難しい課題。

いずれにしても、デザインがクライアントの課題になぜ・どのように有効なのか、また弊社で働くことで何が学べるのか、語る言葉を持ち経営から制作まで積極的に外へ出ていくことが必要と考えている。

質疑応答から

  • ○ 新卒社員などはデジタルに抵抗がない、ベテランは抵抗がある人も多い。
    最近はグラフィックデザイナーとWEBデザイナーを区別せず、両方ともデザイナーとしている。
  • ○ ベテラン社員、特に60代以降の社員の扱いは課題である。
  • ○ 上期・下期で目標を決め、達成度を4段階で評価している。
  • ○ 開発プロジェクトは社員からアイデアを募集している。CDなどの声がけでデザイナーなど希望すれば、参加させている。現場の上司はあまりいい顔をしないが、業務として扱っている。社会貢献の活動も同様である。
  • ○ 生産性や労務管理のため、その日一日の仕事は翌日の22:00までにシステムに入力させている。1日MAX12時間、昨年度は月平均191時間
  • ○ ブランディング活動は紹介ではじまる案件が多い、あとはセミナーなどで集まった人など。
    担当者だけ来ていて、社に持ち帰り、社長に提案する人も多い。ワークショップなどは40-60名ぐらい集まる。
  • ○ TAKIPRODCTSなどで社長賞を出すなど、モチベーションを高めている
  • ○ ADCや海外の広告賞など賞取りも推奨している。しかしNYADCなど受賞した場合、受賞式への参加などで突然50万ほどかかるため内心ビクビクしている。

様々な変革を通して前進する、たき工房さん。多くの取組みの実態について、包み隠すことなく本音で語っていただきました。
湯浅さん、ありがとうございます。



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