
2024年2月、公益社団法人日本広告制作協会(OAC)は設立50周年を迎えました。これを機にOACではクリエイターの今と未来について改めて捉え直すため、OAC中堅クリエイターによる座談会を企画。今回は、デザイナーを中心とした中堅クリエイター5名を迎え、「これからのプロフェッショナルって何だろう?」をテーマに、今と未来のプロフェッショナルについて意見を交わしました。
<座談会メンバー>
■河上 聡さん/クリエイティブディレクター ■髙田 燈さん/Webディレクター ■西澤 優衣さん/グラフィックデザイナー ■田島 大成さん/アートディレクター ■髙田 燈さん/Webディレクター ■林 勇太さん/シニアデザイナー
<OACメンバー>
■名久井 貴詞/理事長 ■宇垣 恵一/専務理事 ■三上 峰生/事務局長 ■瀧澤 武仁/(株)博報堂プロダクツ ■広瀬 達也/(株)広瀬企画(ファシリテーター) ■吉田 和彦/(株)宣伝会議
広告・クリエイティブ業界で活躍するクリエイターやディレクターは、仕事に対してどのような「プロフェッショナル像」を抱いているでしょうか。プロフェッショナルという言葉一つ取っても、人によってあらゆる定義や社会的責任、必要要素、未来への視点などがあります。中堅クリエイターそれぞれの考えを知ることで、クリエイティブ業界におけるプロフェッショナル像の多角的な理解を深めます。
プロフェッショナル性は姿勢や態度から生まれる
名久井/「OAC中堅クリエイター座談会」にお越しいただきありがとうございます。私は2年前から理事長を務めておりますが、コロナ以降、皆さんのお話を聞く中で「グラフィックデザインの衰退」という言葉をよく耳にするようになりました。紙媒体からデジタルに、メディア自体が変化したことが大きな要因かと思いますが、AIや機械の進歩により便利なものが増え、ただでさえ儲からない商売と言われているクリエイティブは、どんどん安価なものになっています。しかし、クリエイティブ業界の者として、今の状況のままで本当に良いのでしょうか。現状を打破するためにも、本物のプロフェッショナルがデザインを生み出したらどんなに良いモノができるか、クリエイティブ業界の我々が今一度「プロフェッショナル」を再定義し、意識を持たなければならないと感じています。特に現場に近い人は、より身近にプロフェッショナルについて感じる部分があるはずで、そういった中堅クリエイターの方と意見を交換し合うことが大切なのではと思い、今回の座談会を設けさせていただきました。
広瀬/理事長からもお話がありましたが、AIや機械が進化したり制作関係も変わりつつあったりする中で、プロフェッショナルについてみんなで考え、キーワードを拾い、OACという広告制作会社の仲間同士で共有し合って強くなろうというのが座談会の趣旨です。では皆さん、プロフェッショナルと聞いて、まず思いつくものを教えていただけますでしょうか。
西澤/私は「責任感」という言葉が浮かびますね。仕事をしていく上で、良くも悪くも提示した情報はターゲットと異なる方向に広がることが多いと思っています。仮に炎上してしまった場合、その炎上に繋がるものの生みの親は私たちなので、しっかり責任感をもち、考えた上でモノを作ることが大事なのではないでしょうか。
林/弊社でもプロフェッショナルという言葉は度々登場するのですが、その言葉に対する考えは全員ボヤっとしています。でも、先輩が「良いものを作るのは当たり前で、その期待を超えてくる存在のことをプロフェッショナルと呼ぶんだよ」とおっしゃっていて、今回、私はその言葉を思い出しましたね。
河上/会社の中でプロフェッショナルという言葉が出るなんて経験はなかったですね。ただ、今その話を聞いて「主体性」という言葉が浮かびました。何か物事に向き合う態度や姿勢というか、そこにプロフェッショナル性は現れるのではないかと思いますね。

田島/僕は「鍛錬」が浮かびました。今の時代は便利になり、様々なツールをプロアマ問わず扱えて、ある程度のモノは作れます。しかし、その後、一定以上のレベルでモノを作るとなったときに、鍛錬を経た何かが光ると思っています。僕自身、アートディレクターという目標のためにデザイナーを志したとき、有名な方々と同じ道を辿るべく、デッサンや色彩構成を鍛錬しました。美大では実力を試すため、デザインコンペにも数多く出しました。それでいくつも賞をもらい、自信をつけましたね。
髙田/私は「課題を多角的に見る」ということが浮かびました。クライアントから課題感を教えていただき、まずは要望通り達成。しかし、それが5手先の課題解決なのかっていうと、そうではないケースが多いです。そこをどう判断し、ご提案に持っていき、解決するかをクライアントと一緒に考えていく。そういった多方面の角度からデザインで解決に導く姿勢こそ、プロとアマチュアの違いだと感じています。
広瀬/ありがとうございます。お話をお聞きした中で、姿勢や鍛錬といった自分の土台みたいなところの考え方と、対お客様で期待を超える、多面性といった考え方と、さらにもう1つ、社会的責任といった考え方など、1つの言葉でもキーワード別でカテゴリーが分かれていますね。
「主体性」はプロフェッショナルな人間に近づくキッカケ
広瀬/では、先ほどいただいたキーワードから、ご自身の具体的なお話を聞けたらと思います。まずは姿勢や鍛錬のあたりで、河上さんのおっしゃった「主体性」物事に向き合う姿勢について、もう少し詳しくお話しいただいてもよろしいですか。

河上/僕は、主体性を「オーナーシップを持つこと」だと考えていて、あらゆる事象を自分事として捉えることだと思っています。昨今はメディアが多様化し、課題も複雑化していて、グラフィックだけでは解決できない領域がたくさんあります。そんなとき、「ここはやるけどここはやらない」となると本質的な問題解決につながらないケースが多いんですよね。そこで、オーナーシップを持っていれば、「これは自分の領域じゃない」ではなく、「自分でやってみよう」「できる人を仲間に入れよう」といったポジティブな動きに変わると思います。そして、そんなオーナーシップを持っている人を私はプロフェッショナルだと思います。実際、企業内で次のアクションが決まったときや、新規プロジェクトを立ち上げるとき、オーナーシップを持ったメンバーが社内にいるかどうかは、企業の存続に大きく関わってくるはずです。
広瀬/主体性を持つということは「広げる」「新しいものをキャッチする」「深める」というものをすべて含めているということですね。
河上/主体性がないと何も生まれないことが多いと思っていて、先ほど髙田さんのおっしゃっていた「5手先の提案」も、オーナーシップがあるからこそ生まれる視座だと思います。そうなると、最初に必要なのはオーナーシップかなと。
広瀬/なるほど、ありがとうございます。林さんはいかがでしょうか。
林/河上さんのお話は、私も実体験があります。過去に、今まで経験したことがない領域のものがクライアントから依頼されました。そのとき「できない」ではなく「どうすればできるか」と考えてみたはよいものの、その領域は社内で誰一人経験がありませんでした。そこで、周りや営業担当者と話し合いながらなんとか案件を進め、実際に納品することができたことがありました。そういった未経験の領域でも「作ってやろう」という気概が、河上さんのおっしゃったオーナーシップになるのではないかと思いましたね。
田島/クリエイターの皆さんはデザイン思考というか、普段日常を過ごしていて、「なんでこんな形なのだろう」とか、「なんでこの色なのだろう」と考えている方が多いと思っていて、皆さんとどこまで近いレベルかは分かりませんが、主体性という言葉を聞き、自分も当たり前にそういう思考をしていたなと気づきました。河上さんがおっしゃっていた、自分が関わったことない、もしくは会社でやったことのない仕事を進めて解決するということ自体がもう、クリエイティブ職の醍醐味ですよね。いかに自分が関わったからこそ、よりよいものができたかとか、そこに達成感を得るのは大切だと思います。
広瀨/そういったやりがいがあるからこそ鍛錬ができるのでしょうか。
田島/でも、単純に好きだからやっているのもベースにあると思います。好きだからこそ自分の能力を伸ばそうって自然に鍛錬していくのかなと思います。

西澤/何か新しいことを始めるって、かなりエネルギーが必要だと感じます。でも、ここ1年、デザインの提案などをしていると「それいいね」「そういうのやりたかった」とか、周りを巻き込んで一緒に盛り上がったりして、結果的に思っていた方向に進み、クライアントやお客様に喜んでいただけるっていう経験が多くありました。そういう経験をすると、やっぱりコミュニケーションとか、打ち合わせの時に話すことが意外といい方向に進むきっかけになるので、良いモノを作るのはもちろんなのですが、その前段階でどんな話をするかが大切で、そこを突破できれば一気に上り調子になると気づきました。そういう意味で主体性というのは、仲間との壁を壊すことにつながりますし、日頃から行うことで、良いモノが作れるようになるのではないかなと思います。
林/西澤さんがおっしゃった「巻き込み力」って良い言葉だなと思います。先ほど私が申し上げた「期待を超える」っていうのは、正直あらゆるプロフェッショナルに共通してしまいます。クリエイティブ業界では、クライアントや協力会社、印刷の現場、エンドユーザーまで巻き込まないと、クライアントと我々だけが喜んでいても最終的に伝わってなかったら、またご発注いただけないということにもなるので、巻き込む力というのはグラフィックデザイン業界のプロフェッショナルに特に重要な力という気がします。
広瀬/高田さんは周りを巻き込むとき、どんなことを考えますか。
高田/あまり意識はしてないのですが、「物事を知らない自分が嫌だ」と思うところがあって、だから最初にズカズカ聞いてしまうことが多くあります。つねに不明点は聞き、わからないことがない道を進むというのはプロジェクト精神の中にあります。周りには「よくこの段階で聞いたね」って言われることもあるぐらいなので、全てをクリアにするまではいきませんが、「なぜ」が出た時点で、絵に描いたりして分かりやすく教えてもらいますね。そこで周りに教えてもらいつつ、その人たちも巻き込んでいって、いつのまにかワンチームになっているみたいな感じです。
主体性や鍛錬に宿るプロフェッショナルとは
広瀬/皆さんディレクター系の方が多いので、チームをうまくまとめるといった機会が多いかと思うのですが、そういうとき、メンバーに主体性を持ってもらう工夫というか、気をつけてらっしゃることはありますか。

河上/私は「母性を持つ」みたいなものは意識したことがあります。ある飲料ブランドでクリスマスプロモーションの撮影をしたときの話です。ツリーを作って季節のプロモーションのリーフレットを作るといった案件でして、企画だけ聞くとシンプルなのですが、制作の過程でプロデューサーさんがスタイリストを2人ブッキングしてしまって、すごく空気が悪くなりました。
広瀬/クリスマスどころではないですね……。
河上/はい。一応ツリーは完成したのですが、5mぐらいの巨大なツリーができると思っていたのに1m程度のものしかできなくて、要素は揃っているのですが、撮影しても迫力は出ないだろうということで「イチから作り直そう」と言いました。全員会話もなく、まずいことになったのですが、そこで「母性」の出番です。お昼ごはんの後、「みんなで集まって円になろう」と言って、私から一人ひとりに感謝の言葉をかけ,最後に「これはみんなの力が必要だ」と言って作業を再開しました。その後、撮影は何とか進み、最後には記念撮影するぐらい仲良くなったのです。だからチームで一丸になるときは、みんなを等しく愛すこと、誰かが良くて誰かが悪いじゃないと考える母性が大事だと思っています。
広瀬/今、クリエイターとその周囲のお話をしていただきましたが、先ほど鍛錬というお話もあったように、自分の能力を高める、知見を広げるとか、そういう目線でのプロフェッショナルについて西澤さんはどうお考えでしょうか。
西澤/私がデザイナーを志したのは高校生の途中で、それまでは吹奏楽部の活動ばかりしていました。あるとき、文化祭でクラスTシャツを作るイベントがあり、絵を描くのは好きだし、試しにやってみたら楽しくて、自分の手掛けたモノが仕上がる感動や、みんなが喜んで着てくれたことから「デザインっていいな」と思ったのです。それから美大を目指そうと決意し、デッサンや色彩構成をゼロから学び、予備校にも通い詰めて何とか合格しました。ただ、周りには「アートディレクターになりたい」「広告会社入りたい」といった憧れを持つ人ばかりなのに、私は憧れるものがありません。これはまずいなと感じ、とにかく図書館やギャラリーに通ったり勉強に励んだりしました。その頃も広告会社に入りたいと思っていたわけではなかったのですが、大学3年生のときに先生がおっしゃった「広告は時代も人の気持ちも社会も、一気にひっくり返すことができる」という言葉に感銘を受け、広告の世界を目指すことに決めました。自分で動き、目で見て気になったものを体感すると世界が広がる。そんな経験があるので、私はプロフェッショナルになるためにスマホの画面上で満足せず、興味を持って主体的に行動することを意識しています。
広瀬/よく好奇心旺盛な人を求める、というような求人募集がありますが、それとは異なる感覚ですか?
西澤/もちろんそれも大切だと思います。日常的に知ること、会社に入って知ることが楽しいという好奇心から続けられている部分も大きいかもしれませんね。

髙田/私も全く一緒ですね。とりあえず出かけて体験してみる。常に勉強し続けたりアンテナを張ったりすることで、世間では今、何が動いているのか、次に何が基礎となるのかが見えてきます。今回のテーマにもありますが、AIの急速な進化に関して、クリエイティブ業界はどうしても暗い話題になりがちなのですが、じゃあそれが当たり前になる世界はどうなるかを想像し、それに対応していくために勉強・経験をしていきたいですね。
田島/そうですよね。自分が興味を持ったものに足を運んで一流のモノに触れ、なぜそれが一流とされているのかを頭で考えてみるということは私もやっています。考える行為自体が大切だと思いますね。
広瀬/見るだけではなくて、そこから考えるというわけですね。河上さんはいかがでしょう。
河上:鍛錬というか、スキルをどうアップデートするかは意識しているところですね。意識することは大きく2つあって、1つ目は「自分が身を置く環境」です。「グラフィックだとこの事務所」「ブランドビジネスをやっている会社ならここ」といったように業界ナンバーワンと言われるところに身を置くことは意識しています。2つ目は、自分の持つスキルセットの周辺スキルは、とりあえず手に入れていくことです。発注者ってマーケターの方が多く、そういう方は上位概念でブランディングや経営をしているので、関わりを持つなら自分でもマーケティングスキルは入手した方がいいと思っています。別の学問に体系化されているものも、案外地続きのものが多いですよ。今まで遠いと思っていたものが案外身近だったとか、こっちの世界を知っているから、それを整理したときに、より理解が深まるという経験が多いので、周辺スキルを獲得するのは意識していますね。
広瀬/「好き」だけで行動しないということでしょうか。
河上/いえ、衝動に近いのですが、納得できない部分があるのです。そこを知らないと見えない世界はあると思っていて、理屈を知りたいというか、その考え方をするうえでどうしても必要になってくるなと。
名久井/私は企業内デザイナーとして活動してきたのですが、企業においてはクリエイターとマーケターが毎日、向き合っています。マーケターは数字とかインサイトとかという用語で話すのですが、私は理解できないことがたくさんありました。ただ、河上さんがおっしゃった通り、それが分からないと発注者の期待を超えることもできない。だからそのために勉強したり、営業担当者について行ったり、工場でどう作っているのか知らないので研究員に直接聞いたりもしました。そういうことを繰り返して周辺への理解を深めると、話は早くなる。60、70年代とか、グラフィックデザインだけのプロフェッショナルでいい時代はありました。でも今はそうじゃないような気がしますね。先ほどのAIの話でもあるのですが、クリエイターの在りようは昔のままではいけないという感覚があります。だから、その意味でも自分の周辺を知る。1つ覚えると、会社が変わっても使えます。私は今、食品と関係ない分野でコンサルティングをしていますが、当時身につけたことはすべて使えます。ですから絵を描くでも何でも、表現という答えの出し方を多様に持つことが、これから大事なのではないかなと思いますね。
広瀬/理事長のお話を聞いて林さんいかがでしょうか。

林/おそらく理事長と自分は似た立場なのかなと思っています。まさに私もメーカー子会社のハウスエージェンシーに所属しており、親会社から依頼いただくのですが、その中で難しい依頼が来た場合、きちんとヒアリングしていかないと表現の仕方を噛み砕くことすらできません。親会社のPRをするのに我々が理解できていないと何も進められないと感じます。他にも、物流においてパレットの積み込みやトラックへの効率的な積載など、そういうところも含めて考えないといけないので、他の分野の方と話すのは非常に大切だと思いますし、そうやって情報を広く持っていないと、アウトプットのときになかなか相手に伝わらないと感じますね。
西澤/すごく分かります。私で言うと、百貨店の食料品でも婦人服でも何でもそうなのですが、本当にそこの一流を知っている方々とお話をするのってマニアックで面白いです。やっぱり親しみやすいのって、マニアックで、ある種の変態性を持っている人だと思います。リアルな現場の話って、検索しても出てこなかったりするので、そういう意味では、他の分野の方と話したり、プロの技術を体感するっていうのは、自分の原動力になるし、もっと頑張ろうっていうポジティブな気持ちになりますね。
クリエイティブ業界におけるプロフェッショナルの責任と未来
広瀬/自身がどうするか、周囲とどうするかというお話やクライアントっていうお話もありましたが、最初に皆さんからお聞きした中で、西澤さんがおっしゃったプロフェッショナルにおける「責任」について、これからの未来をどう考えているかお聞かせください。
西澤/今は百貨店の仕事がメインなのですが、北海道展などの物産展は百貨店として人気で、その際に紙を扱う機会が多く、特に折り込みチラシは物産展ごとに毎回作っています。令和の時代に紙なんてそぐわないかもしれませんが、実は私が担当している百貨店のお客様にとって、すごく大事な媒体なんです。初めてその折り込みチラシを作ったとき、物産展の現場を見に行ったら、チラシを握りしめている人が多く、チェックしながら店内を巡っているお客様を数多く見かけました。もちろん私たちは「美味しいな」「これ面白いな」と思いながら商品を作ってはいますが、それを楽しみにされているお客様はきっと私たち以上に楽しみにしていて、チラシをもって「これを買うんだ」と意気込んで来店されているんだということを知りました。そこから、たとえ一つの行事の折り込みチラシだとしても、これからはもっと本気で責任を持って作らなきゃいけないと思いましたね。

広瀨/お客様の持つ期待への責任というところでしょうか。
西澤/そうですね。やはり少しでも楽しんでもらうのがクライアントや私たちの目標なので、自分たちが作るものは紙であろうが、Webであろうが、SNSであろうが、姿勢は一緒だなと思います。
広瀨/ありがとうございます。責任のお話だけでなく、ユーザーや社会の未来といったお話を最後にお聞きしたいのですが、何か考えること、仕事で感じたことなどはありますか。
林/商品によってターゲットが異なりますが、子どもターゲットの商品のデザインを作る際は、自分が子どもになった目線で見て楽しいとか可愛いとか直感で思えないと伝わらないなと考えているので、どれだけターゲット目線でデザインできるかが大切だと思っています。例えば実際にスーパーの売り場に行って、自分が低い目線で売り場を見るっていうのは大事。光の反射で見えなかったら意味がないので、そういうフィールドワークでの目線を大切にしていますね。その中でどうアテンションしていくかなど、寄り添う目線というのが、我々プロフェッショナルの責任の1つではないでしょうか。
河上/プロフェッショナルと聞いてどう感じるかという問いかけを「未来」の視点で見ると、見え方が変わると思っていて、究極、社会を豊かにとか、人を幸せにということに帰結するのではないかと思っています。林さんのおっしゃった子ども向けお菓子なら子どもが幸せになるかもしれないし、社会を良くするために自分たちがワークしてるんだな思うと、プロフェッショナルのあり方って、そこに向かっていきますよね。ポジティブな意味だと、幸せにするということになりますが、同時に「不幸にしないこと」にもつながると思っています。「ない」状態から、「ある」状態にするっていうのは楽観的に見ると全部良くなる作業ですが、投下することで誰かが傷つくかもしれない。責任というワードにはそういう視点もあるなと思って、だから両方を持ちながら仕事することが大事だなと思いました。
髙田/私たちが取り組んでいる仕事の意味を、日ごろのコミュニケーションやユーザーの声、クライアントの振り返りミーティングで確認し合っていくことが責任につながっていくのではないでしょうか。もちろん良くなかったというケースもあると思うので、チームに共有してどう回復していくかを相談。そこでまたチームの結束も強まると思いますし、企業側からもフィードバックいただいて回復させていくっていうところに責任があると思います。そこが未来を見据えたときに、大切になってくると考えます。

西澤/SDGsが定着してきたこの時代、お仕事でも、例えばジェンダーレスなモノの提案とか、ロスを出さないモノづくりといったお仕事は増えています。そういう機会をキッカケに、自分が知らない分野でこういうことが起こっているとか、今までこんなロスがあったとか、未来の社会にとってマイナスな面を感じることは多くあります。どの案件だとしても、SDGsが当たり前になるのは目に見えているので、いかに暮らしを豊かにするかはもちろん、それが社会に与える影響や、どんなことをもたらしてしまうかなど、私たちがどういう表現、クリエイティブで伝え、解決していくかを考えていかなければならないですよね。
広瀬/ありがとうございます。では、お時間も来ましたので、最後に理事長、締めをお願いします。
名久井/理事長になって、若い人たちと集まってお話するのは初めてでしたが、テーマを持って話せたので、とても有意義な時間になったと感じました。クリエイター同士での話し合いって、実は意外と少ないような気がしますが、クリエイティブ業界には、多種多様な目線で話のできる人たちはたくさんいるので、今後もぜひ継続していきたいなと思います。私なりのプロフェッショナルについてですが、デザイナー、クリエイターのプロフェッショナルの歴史的な話をすると、産業革命のときに「芸術家」はアーティストからデザイナーに切り替わりました。それは大量生産でできたモノが格好悪いからキレイに直そうとしたことが始まりです。その際、先ほどのお話にもありましたが、巻き込む力を持った人間が立ち上がり、何人もの人を動かしたはずだと私は考えます。そういう立ち上がる力、巻き込む力がクリエイターにはあると思っているので、心のどこかにそういったプロフェッショナルを持っておくといいなと思いますね。それでは皆さん、本日はどうもありがとうございました。(2025.6.25)
座談会メンバー プロフィール

河上 聡さん/クリエイティブディレクター
前職ではスターバックスコーヒージャパンにて10年間、カテゴリーマーケティング本部のクリエイティブディレクターとして従事。またセキスイからヘッドハンティングされ、5年程度マーケティングチームでクリエイティブディレクターを務めた。2024年にKKKKを立ち上げ、現在は同社にてクリエイティブディレクターを務める。

髙田 燈さん/Webディレクター
たきコーポレーションの社内カンパニーである「たきコーポレーションZERO」に所属。入社時はグラフィックデザイナーからスタート。しゃべれるデザイナーを目指すべく、デザインの背景や課題解決に説得力をつけたいと思い、WEBディレクターへと転身。出産を経て転職したが、たきコーポレーションとの縁があり、再度入社。

田島 大成さん/アートディレクター
複数のデザイン事務所で経験を経たのち、地元の富山に帰省。富山では大広の北陸支社にてアートディレクターを務めたが、都会の情報社会で生きたいと思い、東京のデザイン会社を経てスタヂオ・ユニに入社。現在はスタヂオ・ユニでアートディレクターを務める。

西澤 優衣さん/グラフィックデザイナー
高島屋が母体となる広告会社、オールタカシマヤエージェンシーの頭文字からなるATA(エーティーエー)にて、グラフィックデザイナーとして入社。高島屋での業務がメインだが、現在は外部の業務にも注力。現在は入社7年目となり、日本橋高島屋での業務を中心に、ディレクター・デザイナー業務を担当している。

林 勇太さん/シニアデザイナー
明治のハウスエージェンシーである広告代理店、明治アドエージェンシーにて、SPデザイングループに所属。前職では、別の広告制作会社に勤め、グラフィックデザイナー兼営業として従事。現在は入社5年目となり、シニアデザイナーとして販促物のデザインをメインに担当している。